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気がつけば釣り竿を没収され、上着を脱がされ横腹の傷口をまじまじと千鳥に見つめられるという意味の分からない状況に陥っていた。
おかしい。 何故こんな状況に? 今日のキャンプは俺のよく行う訓練キャンプと違い、千鳥いわく…親睦を深める為にアウトドアを楽しもうのキャンプだそうだ。 よって厳しい上官も訓練メニューも存在せず、調理道具や肉、野菜などは持ち寄りで、魚を現地調達する程度の特に先の負傷を報告せずに作業をしても問題ないと思われたのだが、どうやら千鳥はそれが面白くないらしい。 「ぅわぁ…痛そう…」 顔をしかめ身を屈めて傷口を見ている千鳥は、手を伸ばさずとも体を少し傾ければ触れられる位置にいた。 いつもは下ろしている長い黒髪を結い上げ、クチバシと呼ばれる金属のアクセサリーで留めてある。長く細い小指には細いピンクゴールドのピンキーリングと呼ばれる指輪をしている。 今日の水着の色はサファイアブルーのグラデーションだ。 自分にそういったセンスは無いが、千鳥にとても似合っていると思った。 水着を着る際は場所を選んで欲しい。 そう思うようになったのはいつからだったか… 彼女の綺麗な肌を、他の大多数の男に見られるのを不快に思ってしまう。 ばかな事をと昔は思っていた…彼女は重要な護衛対象だ。だいたい自分は、彼女のそばで護衛出来るだけでも幸運なのだからと。 実際ダナンの中の奴らはいつでも変わると帰る度に言いに来ていたる。 それだけは絶対にあってはならないと この気持ちを理解せず思っていた。 今は尚更だ。 なんせ彼女は自分が全てをかけて手に入れたいと初めて願う唯一無二の存在なのだから。 こんな自分にも優しく世話を焼いてくれる彼女を渡すわけに行かなかった。 「もー…怪我してるなら怪我してるっていってよね」 「すまない。」 「まだいたい?」 「問題ない。」 「…つつくわよ」 「ぅ…触らなければ問題ない」 やっぱり痛いんじゃないの~と膨れながらも心配そうに見てくる彼女が愛しい。 出来ることなら今すぐにでも抱きしめたいと願ってしまう自分の浅ましさに顔には出さず、しかしかなりの忍耐と努力で心のそこで蓋をした。 続く PR |
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そういえば遊び疲れた恭子が
「休憩~」 と言いながら川からあがって結構時間が経った気がする。 あたしも疲れてきたかな~と釣りに飽きた小野Dと風間君に 瑞希とお蓮さんの相手を変わって貰って休憩しようと辺りを見回したら ちょっと離れた所に並んで座るソースケと恭子を見つけた。 何だか楽しそうで…ちょっと胸がざわっとする。 別に恭子は親友だし、あたしはソースケとは何でもないし、二人が一緒に楽しそうにしてても関係ないけどさ。 でもなんか…あそこはあたしの席なのになんて柄にもなく思う。 隣にいるのは恭子なのにそんなことを考えるなんて… 「暑っ…」 張り付く前髪を指で横に撫でつけながら 視界に二人が入るように少し大きめな岩に座った。 不意にさっきのソースケの言葉が頭の中に浮かび上がる。 あいつの大切って何だろう。 「なに考えてんだか~あたしは」 苦笑いを浮かべゴロンと横になった。 「あ~かなちゃん!日焼けしちゃうよ~」 いつの間にか恭子が隣に立っていた。 宗介はまだ釣りをしている。 「かなちゃん!横になるなら相良くんの隣が良いよ~日陰だし、風も気持ちいいよ!」 無邪気に笑う恭子に 少し罪悪感を感じながら 「そうなんだ。じゃ行ってみようかな~?」 なんだか眠くってさ~と笑いながらあたしは恭子に手を振りながら宗介のいる岩場に向かった。 「わぁ~本当!涼しい~!」 「どうした千鳥。疲れたのか」 「うん。昨日夜あんまり寝てないから、ちょっとね」 宗介の隣に行こうか悩みながらちょっと後ろから話をする。 「そうだな。何やら調理していたようだが?」 「まあ…今日のお弁当の仕込みを…ってあんた、また見てたの?」 「む…」 しまった!とみるみるうちに汗をだらだらとかいていく宗介にはぁ…とため息をついてつついてやった。 「あんたね…いつもいつも人のこと見てんじゃねーわよ。」 つんつん 実は最近はそれもちょっと嬉しかったりするのだが、照れ隠しに横っ腹をつついた。 「?」 いつもならすぐに 「俺は君の護衛だ。常に行動を把握してなくてどうする。」 とかなんとか言うはずが つついた所を軽く指で押さえて一層汗を流している。 「…千鳥…」 「ん?なぁに?」 覗きこむと顔が軽く青ざめているような? 「そこは先の任務で負傷し、治療した場所なので…以後別の場所を刺すようにしてくれ」 「もっと早く言え!このばかー!!」 続く |
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「「と…常盤?!」」
「常盤さんいつから起きてたの?!」 んーっと伸びをして体を解す恭子は特に何ともなげに 「はじめから☆面白そうだから皆で寝たふりしちゃった☆」 「「「皆?」」」 固まってしまった男三人を尻目に起きて伸びをして体を解す残りの女子。 「ばかな…さっき確認した時はは寝ていたはずだ」 まさか自分の判断が間違えていたとは…と宗介だけは違う理由で固まっていたが 一向に起きない女子を見て首を傾げる。 「千鳥?やはり寝ているのか?」確認しようと近く宗介 「うるさい!」 起きあがらずに丸まったまま返事をするかなめ。 「かなちゃん照れてる~」 にやにやと恭子が笑った。 「恭子!!」 「はいはい。ご飯食べよう~」 思わず起き上がってしまったかなめは うーとかあーとか言いながら 恥ずかしそうに宗介から顔を背けた。 「千鳥?」 「うー…そーすけのばか」 いつもと変わらない雰囲気の宗介に 少し膨れながらかなめは立ち上がって皆の元へ歩いていった。 「???」 宗介はよくわからなかったが飼い主の後ろをついて行った。 「相良くん、ちょっといい?」 「常盤か…どうした?」 食事の後雨も上がり、男子は釣り竿を持ち、女子は水着に着替えて洞窟の近くの川に来ていた。 天気は回復に向かい、釣りをしてるちょっと下流では女子が水遊びをしている。 釣れ具合も上々で今から夜の食事が楽しみだ。 少し離れたところで全体を見渡せる場所に陣取った宗介は周りを警戒しながらそれなりに釣りを楽しんでいた。 「わぁ~いっぱい釣れてるね☆相良くん釣りが趣味って本当だったんだ」 「肯定だ。特に今日は調子が良いようだ。」 しかけから目を離さずに会話する宗介のとなりに座り、恭子は言葉を続けた。 「あのねかなちゃんは可愛くて、スタイルよくて、モテモテさんなのに、凄い恥ずかしがり屋で、素直じゃないけど、凄い頑張りやさんなんだ」 「そうだな」 「相良くんが来てからかなちゃん毎日楽しそうであたし嬉しくって」 えへへ…と本当に嬉しそうに恭子は笑った。 「そうか」 「うん!だからね…ずっと…かなちゃんのそばにいてあげてね」 恭子は楽しそうにはしゃぐかなめを見ながら言った。 「相良くん…かなちゃんのそばにいて…変わったから。」 「……」 「かなちゃん…守ってね」 ぽつりと呟いた恭子の横顔は いつもの無邪気な彼女からとは別人の様に大人びていた。 つづく |
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「だいたい相良くん、好きなタイプとかあるの?」
だいたい思春期時に一度は上る話題だ。 「タイプ?」 案の定よく解らないといった風に宗介は首を傾げる。 「こういう人とずっと一緒にいたいな~って思う理想像みたいなものないの?」 「理想像…」 「例えば、料理がうまいとか、優しいとか…いろいろあるだろ~?」 むーん…と考えてしまった宗介に風間と小野Dは笑いながら深く考えるなとせっつく。 「そうだな…体調管理ができ、あらゆる装備を使いこなし、地理や地形などに詳しく…また」「ストップストップ!そう言うのじゃなくて!」 「何故だ風間。重要なことだぞ。」 「あのなぁ相良…そういうタイプじゃなくて好きな女の話だよ」 なんでこう話が通じないんだと半分げっそりしながら風間と小野Dはため息をついた。 「好きな女…」 「いないとは言わせねぇぞ~」 「そうそう」 さっきよりも真剣な目で二人に前のめりになりながらさぁ吐けと詰め寄られ 宗介はなんとなく逃げたくなったが、こういう話は女子がやたら話しているのを思い出し、これが世間一般の若者の会話なのだろうと納得することにした。 「そう…だな…」 宗介は元々あまり女性とは関わりがないので タイプはかなり偏るが芯の強い女性が多いように思う。 そしてよく笑い、明るく、皆優しいように思う。 そして自分はそれに救われている気がするのだ。 その中でも千鳥といるときが自分にとって一番安らぎを覚える。 「相良?」 遠くを見たまま何も言わなくなった宗介に 頭パンクしちゃったかな?と心配になった風間が声をかけた。 すると宗介は真っ直ぐ風間を見ながら話し出した。 「千鳥といると安心する。」 「…へ?」 それはタイプと違うんじゃぁ… ぽかんと間抜けな顔になる風間を宗介は気にしない。 「千鳥といる時間が俺は一番大切にしている。彼女は大切で特別なんだ」 小野Dがうーんと首をひねった。 「つまり千鳥タイプがいいってことか~?」 小野Dの言葉に宗介は首を振り続けた。 「いや…千鳥でなくてはだめだ。千鳥と離れると彼女に何かあったらと気が気でなくなる。」 「それってつまり…タイプどうこうではなくって…て事かな?」 「相良…卒業式のあれをみてりゃわかるけどよ…そうじゃなくてだな~」 「やっぱり相良くんはかなちゃんが大大大好きって事だね☆」戸惑う男二人の後ろから満足そうなかわいらしい声が聞こえた。 続く |
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「うぅ…びしょ濡れだ…」
洞窟の入り口で一度荷物を下ろしきちんと整理しながら風間は情けない声を出した。 「女子は濡れなかったかなぁ?」 奥からは暖かい焚き火の光がゆらゆらと揺れている。 「焚き火か~皆無事みたいだね」 「つか寒ぃよな~早く俺もたき火に当たりてぇ」 風間と小野Dは安心したように笑った。 「そうだな。罠はないようだ。」 「そりゃそうでしょ」 「風間油断はいけない。」 「ほら相良くん、千鳥さん待ってるよ」 はいはいと苦笑し、放っておくといつまでも相良軍曹(自称)による戦場の悲惨さを延々と講義されるので、風間は早々に伝家の宝刀、鶴の一声、千鳥の名を出したのだった。 「む」 効果覿面。不可視の耳としっぽを振りたき火の方へと足を早めていった。 奥に着くとどうやら女子達は待ちくたびれたようで固まって寄り添いすやすやと寝ていた。 「まったく…無防備にも程があるぞ」 とりあえず一通り調べてみて、ただ寝ているだけだとわかると、宗介達は荷物を置き、着替える事にした。 「相良君て本当に年齢にそぐわない体つきしてるよね」 「そうか?」 羨ましいよと風間は笑った。 「お。おにぎり発見!焼いて食おうぜ!」 「小さいお鍋に味噌汁入ってるよ~作って待っててくれたんだね」 いそいそと食事にありつこうとする二人に宗介は咎めるような口調で制止した。 「勝手に食ってはいかん!」 「じゃ相良はいらねぇの?」 空腹でお預けなどまっぴらだと言わんばかりの小野Dに宗介はため息をついた。 「そうではなくてだな。作って待っていてくれたのならこちらも起きるのを待つべきだろう」 確かにそれは正論なので二人は顔を合わせため息をついた。 どうやらこの忠実な番犬は飼い主が起きるまで食事をするのを断固阻止するらしい。 二人ではこの番犬に勝てる見込みは無いのでとりあえず焚き火にあたり体を暖めることにした。 「なんかさ…こう見ると皆本当に可愛いよね」 「おー!本当にうちの学校レベル高かったんだよな」 風間と小野Dがちらちらと女子の方を見ながら笑った。 「なんの話だ」 「女子の可愛さレベルだよ~本当に相良くんそう言う話疎いよね」 「まぁいつも千鳥の側にいるとほかが霞むんじゃねぇの~?」 「?千鳥がどうかしたのか?」 にやにやしている二人に全く話が読めない宗介。 三人は持参していた飲み物を飲みながらたわいもない話を始めた。 続く |
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