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全部全部夢だったんだと
何もなかったんだと思いたかった。 君に会えたこと 幸せの意味 必要とされる喜び 全て忘れてしまえば辛くない。 君のいない世界など 俺には必要ない。 「馬鹿ね。」 髪を撫でる感触。 優しい声。 「あたしはここにいるわ」 囁くように柔らかい声 「だいたい、爆発したの人形でしょ」 少し拗ねた声がする。 宗介は窺うようにかなめを見た。 「似ていた」 ぽつりと呟く声にかなめが大げさにため息をつく。 「だからってあたしと人形間違えるなんてどんだけあたしのこと考えてたのよ」 なんてね~と、ぽんぽんと軽く頭を叩いた。 宗介は暫く考えて今度ははっきりとしっかりとかなめを見ていった。 「そうだな…仕事中のはずなのに君のことしか考えてなかった。」 「なっ…!?」 とたんにかなめの顔が赤く染まる。 だが宗介はお構いなしに言葉を続けた。 「昨日は大事な日だった。俺にとっては。」 「そーすけ…」 「らしくないことをしたからこんな事になったのだろうか」 またしょんぼりと俯いてしまった。 「なんで…大事だったの?」 「…」 少し窺うようにまたかなめを見て、意を決したようにズボンのポケットから小さな箱を取り出した。 「…本当は…もっとちゃんと色々考えていたのだが…」 ごにょごにょと言いながら宗介は箱を開け、かなめの左手を手に取った。 「-ッ!そ…すけ…」 かなめは恥ずかしそうに宗介を見た。 「かなめ。俺はクルツやマオの様に気の利いた言葉も言えない。君をイライラさせてばかりだ。迷惑ばかりかけてきた。守るつもりが守られてきたと思う。それに…」 顔を赤く染め汗を吹き出したがら一生懸命宗介はかなめを見つめながら話している。 「君に俺は必要ないかもしれない。だが俺には君が必要だ。君が居ない世界など俺には必要ない。だから…」 宗介はそこで言葉を切った。 震える指でかなめの左薬指にそっと大切な約束をはめる。 「俺と結婚してくれ」 かなめの目を見てはっきりと宗介は言った。 そしてかなめの目からまた涙が流れているのに気が付きわたわたと彼女の手を離した。 続く PR |
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一人大人しくなった宗介を後目に他の4人はさっさと残りを平らげてしまった。
「うーん…少なすぎたかな?」 「カナメさん、後片付けは私がやりますからもう少し休んでください。」 苦笑いしながら後片付けをしているかなめにテッサが話しかけた。 「食堂で洗ってきますね」 「いいわよテッサ~家でやるわ」 「いえ!ご馳走になったんですもの!それくらいさせて下さい。」 にっこりと笑うと一緒に食べていた部下を引き連れ部屋から出ていった。 「…なんか…急に静かね~」 ポツリと呟いたかなめはテッサの言葉に甘えてもぞもぞとベッドへ潜り込んだ。 「かなめ」 ベッドわきに椅子を置き、それに座った宗介は戸惑いながら彼女をよんだ。 「なぁに?」 かなめは真っ直ぐ宗介と向き合う。 だが宗介はかなめを見ることが出来なかった。 「かなめ…」 「ん?」 「すまなかった…」 絞り出された謝罪の言葉 「俺は…」 「ねえそーすけ」 なおも続ける言葉をかなめが遮る。 「どうして…忘れちゃった?」 「--ッ」 真っ直ぐ宗介と向かい合うかなめに宗介は目を合わせることが出来ない。 「…あたし…もう…忘れるくらいの…存在?」 「違う!!」 「じゃぁ…どう…して?」 かなめの目から涙が零れた。 耐えていた涙は零れ始めたら止まらなかった。 「君を…失ったかと…思った。」 「え…?」 「本当は解っていた。君は真面目だから、優しいから、だから仕事に行ったのだと。」 「…うん…」 宗介が順を追って説明を始めたのだとかなめは理解した。 涙を拭いて言葉を待つ。 「君が居なくなった後クルツから仕事の電話が来た。街に侵入者が入ったからと…だから仕事に行った。」 「うん。」 「ただの廃ビルで、いつも通りに部屋を確認、ただそれだけだった…だが…」 言葉が切れた。少し俯いた顔色が悪い。 「うん。」 「最後の部屋に君が…」 「え…?」 「君…が…倒れていて…」 言葉が途切れ途切れになる。 「そーすけ?」 「抱き上げた…抱き上げただけなのに…」 震える肩。 いつもあんな強気な彼がただ恐れている。 「…爆…発し…て…」 握った拳から血が出るんじゃないかと心配になる。 「怖かった…?」 その手をとり手を開かせてかなめは自分の手を重ねてやる。 「怖…かっ…た…また…君…を…失ったかと…」 今にも泣きそうな顔で大事そうに重ねられたかなめの手を握る。 続く |
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「ちょっとテッサ!!それはあたしの五目巾着よ!」
「違います!メリッサはもう食べたじゃないですか!」 「おいソースケ!その肉巻き寄越せ!」 「断る!!」 「ほらベン!かなめの料理は天下一品よ~!」 「いや…俺は様子を見に来ただけなのだが…」 「じゃ俺食べますよ隊長☆」 「貴様にやるぐらいなら俺が自分で食す!」 「いらないんだろ!中尉さんよ!」 「いらんとは言っとらん!!ミズ・チドリの体調の心配をして辞退をと!」 「じゃあたしがもーらいっ!」 「「ああっ!!」」 「メリッサ!はしたないです!」 「うまぁあい!!さっすがかなめ!お嫁にきてえっ!!」 「だめだ!クルツ!マオを連れて地下へ戻れ!」 「おぃおぃソースケ、俺にねぇさんのお守り押しつけんなよ。俺はいんげんのゴマ和え食うんだから。」 「おいウェーバー!それは俺の皿だ!食いたければ自分で取れ!」 「ちょっとクルツ!お守りってどういう意味よ!」 「ウェーバーさん!それは私の玉子焼きです!」 「ケチケチするなよテッサ~一個ぐらい」 「ダメです!この玉子焼きにエビマヨポテトに肉団子は私のです!サガラさん!その肉巻き私にもください!」 「了解しました!」 「ずりーぞ!俺も!」 「やらん!」 「ウェーバー!暴れるな!」 だん! 「ああもおっ!うるっさい!!!!」 「「「「!!」」」」 「ちょっと!!少しは静かに食べられないの!?テーブルの上がぐちゃぐちゃじゃないの!」 気が付けばかなめが腰に手を当て仁王立ちしていた。 宗介とかなめがお弁当を食べ始めてすぐマオとテッサが加わり、すぐ後にはクルツとクルーゾーが入ってきて医務室は食料争奪戦が繰り広げられた。 当初真面目なクルーゾーが宗介にかなめの容態を確認したり、テッサがセキュリティーの強化報告などの今後の話をしながら暫くは静かだったのだが クルツとマオがあまりにも食べるのでテッサと宗介が自分の食料を確保しにテーブルに戻り…今に至る。 はじめは皆ご飯も食べず動いてくれてたんだと嬉しく思い大人しく見ていたかなめも、どんどんエスカレートしていく彼らに限界が来た。 「保健室では静かにしなさい!」 「かなめ…ここは保健室ではなく」 「やかましい!!もうご飯あげないわよ!」 「それは困る」 つい気になって突っ込んでしまい一喝され不可視の尻尾が足の間に入っていった。 続く |
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泣いているかなめから目を逸らさずはっきりと宗介は言った。
「当たり前だ。」 「そ…すけ…」 「君は…綺麗だ。」 「綺麗…?」 「あぁ」 視線を宗介に合わせかなめは少し嬉しそうに笑った。 また涙がこぼれる。 「そーすけ…あんまそう言うの…言わないから…くすぐったい」 「そうか」 「…そうよ」 「かなめ…」 「そーすけ…」 そっと唇が近づく。 ぐうぅうぅううぅううぅうっ! 「「!」」 二人とも盛大にお腹が鳴った。 「むぅ…」 「や…やだっはずかしぃっっ」 二人で視線を泳がせて、そして視線を合わせ笑う。 あたしは大丈夫。 そーすけがいれば、きっといつもなんとかなる。 そう思いながらお弁当大丈夫かなぁ?と言いながらベッドから降りてテキパキとお弁当を広げるかなめを見ながら その後ろで不可視の尻尾を盛大に振り彼女の無事とこれから食す料理に珍しく心を躍らせる宗介だった。 「どう?」 「どうもこうもありませんっ」 監視モニターを覗いていたテッサはため息を付いた。 「あまり私が見るに耐えない尋問をするのはやめて下さいね!」 「あーごめんごめん」 と笑いながらマオは煙草に火を付けた。 「だけど少し痛めつけてやらないと気が済まないのよ。」 「まったく…ウェーバーさんまで」 「当たり前よ。あいつはそういう男よ。わかってるでしょ」 「わかってます。でも言いたかっただけです!」 「まったく…暫く医務室カメラ見てまったりしてなさいよ」 「それはいやです!」 ぷくーっと膨れた可愛いテッサの頭に手を乗せながらカチカチと操作をしていたマオは医務室カメラの映像を見るとテッサの手を取った。 「行くわよテッサ!」 「ちょ…ちょっとメリッサ!?」 半ば引きずられるようにしてテッサは医務室へと向かった。 数分後置き去りにされた事に気が付いていないクルツは休憩がてら監視室へやってきた。 「ねぇさん~あいつまた失神したぜ、どう…あれ?」 頭を掻きながら見回す部屋の中には誰もおらずモニターには医務室の映像が映っていた。 「んなっ!?俺だけのけ者にするとはっやってくれるぜ!!」 俺もまぜろーっと叫びながらクルツも医務室に走っていった。 それを見たクルーゾーは全身でため息を付き近くにいたスタッフに監視を任せ自分も部下の様子を見に医務室に向かった。 続く |
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なんか手が…あったかい…
誰の手かな… うっすらと目を開けると白い天井が目に入った。 身体は清潔な服と布団に包まれ、頬以外は痛みを感じない。 ス…と顔を動かせばボサボサ頭がベッドにぽすんと埋まっていた。 手はしっかりとかなめの手を掴んでいる。 顔は見えない。 「…そーすけ」 寝てるの?と小さく呼んだ。 答えない彼からは特に寝息も聞こえない。 まさか…また忘れちゃったの? ねぇそーすけ…名前呼んでよ。 こっち向いてよ。 いつもみたいに問題ないって言ってよ。 自然と唇が震える。 涙が出そうだった。 もぞり… そーすけが動いた。 まるでベッドに顎をかけ、飼い主を見ている大型犬のように心配そうに此方を見ている。 目が赤い。 「泣いてるの…?」 視線が泳ぐ。 「…肯定だ」 布団にまた顔を埋めてかすれた声でそーすけは呟いた。 「ばか。泣きたいのはこっちだっつうの。」 手を繋いだまま身体を曲げて宗介の顔の前にいってやった。 「…すまない」 「…ばか…」 「…すまない」 「…そーすけのばか…」 「…すまない」 「すまないばっかり…」 「すまな…む…いや…」 「そーすけ」 「なんだ」 「名前呼んでよ」 「…かなめ」 「もっと」 「かなめ」 「うん」 「かな…め」 「…うん」 「すきだ。」 「うん…」 「かなめ…すまなかった」 「うん」 顔を寄せおでこと鼻をくっつけて 宗介とかなめは泣きながらお互いを確認する。 「痛くはないか?」 「うん…あ…ほっぺた痛いかも。」 「殴られたのか」 「うーんよくわかんない。押し倒されたとき頭打って痛くてそれどころじゃなかった」 「そうか…」 「そーすけ、手痛いよ。力抜いて」 「す…すまない」 「ほっぺた跡残るかな」 「いや。暫くしたら消えるだろう。医療班もそう言っていた。」 「そっか…」 少し微笑んで呟いた。 そして少し目線を伏せ おでこをスリ寄せた。 「ね…あたしね、服破られたり、押し倒されたけど…大丈夫なんだって」 「…」 「ちょっと触られたけど、覚えてる範囲では表面だけだし」 かなめは笑っている。だが楽しい訳じゃないのは宗介にも解った。 「表面…だけ…?」 「だから…ね」 「…」 「汚れてない…よね…」 「!」 「あた…し…汚れ…てなんか…ないよ…ね…?」 肩を震わせて必死に縋るように見る瞳から綺麗な液体が溢れた。 続く |
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