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「かなめ!!かなめ!」
腕最中でかなめは反応しなくなった。 俺のせいだ! 俺が彼女を一人にしたんだ!! 「すまない!かなめ…すまない…」 冷たい体を抱き締め、頬にキスをする。 力なく宗介に寄りかかる彼女はまるで人形のようだった。 失ってしまう…あの日のように! 嫌だ!嫌だ!! 「かなめ…頼む…どこにも行くな…かなめ…」 自分の中にある熱がすべて彼女の中に移ればいいのに! 宗介は必死にかなめを抱きしめながらクルツが来るのを待った。 その後は嵐のような慌ただしさだった。 クルツとマオが毛布を持ち屋上に到着し、かなめに巻き付け宗介が抱きかかえ医務室へ。 クルツとマオはそのまま屋上で男を拘束、地下で事情聴取。 記憶の戻った宗介は隙あらば男を殺しに行こうとするので、クルーゾーが監視をし医務室前で待機させる。 テッサはまさかの第二ミスリル内での事件にマデューカスと共に防犯のチェックに強化の対応に追われた。 医務室前で報告書を書きつつ中の様子を気にしていると、中から診察を終えた医務班の女性が出てきた。 「かなめは!?」 飛びかからんばかりの勢いで詰め寄ると傷はほとんどなく、レイプもされた形跡はない。頭と頬を殴られた所為で少し意識が不安定だっただけだと言う。もう中に入って大丈夫だと言われたが 「その代わり静かにして下さいね!」 と医務班の女性は一応念を押して去っていった。 クルーゾーも報告書を手に何も言わず去っていった。 「…かなめ…?」 扉を開けそっと中を見るとかなめは寝ていた。 さっきよりも顔色が良くなっているように見える。 頬も少し赤くなっているが暫くしたら跡は残らずなくなりそうだ。 「かなめ…」 名を呼び髪に触れる。目を開けないかなめは心地いい寝息を立てている。 ほっとするとベッドの横に見慣れた風呂敷包みを見つけた。 良くかなめが弁当を包んでくれる物に似てる。 スンスンと鼻を近付け匂いを嗅いでみる。 美味しそうな匂い。 間違いない。かなめの手作り弁当だ。 ぐうぅうぅうっ 「!」 盛大に腹が鳴った。 さっきまでは全く自覚がなかったのに美味しそうな香りに耐えられなくなっている。 宗介はかなめが起きたら食べて良いか聞こう。と不可視の尻尾をぱたぱたとさせた。 大丈夫。彼女は無事だった。 ベッドの横の椅子に腰掛け、手を重ね緩く握る。 暖かさに涙が出そうだった。 続く PR |
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「おいソースケ!」
クルツは訳も分からず宗介の後を追った。 かなめからの電話に出てからおかしい。 急に銃など持ち出して走り出した。 「クソッ!!」 エレベーターがなかなか来ず宗介は横の非常階段を上り始めた。 屋上へは4階上がればいいはずだ! 頭の中で彼女の悲鳴だけがこだまする。 彼女は俺の名を呼んだ!行かなければ! -バアアアン! 「なんだ!?」 屋上の扉を勢いで蹴破り飛び出した宗介は銃を構えた。 「ッ!!!」 そこで見たのは最悪の景色だった。 見たことがない男が上半身裸で、下はベルトが外されチャックは降りている。 そしてその下には冷たい床に組み敷かれた彼女。 服は無惨に引き裂かれ美しい四肢を晒していた。 力ない瞳。 殴られた頬。 唇の箸から流れる一筋の赤い線 一気に宗介の脳に色々な風景、音、記憶が流れ込む。 そして 何かが切れた。 パァンッ 「ぎゃあぁああ!!」 かなめを組み敷いていた男が叫び声をあげ地面に転がった。 パァンッ 「うぎぃいぁあぁあああ!」 乾いた音が響き男が叫び声をあげる 「なにをした…」 ゆっくりと近づきながら感情の押し殺した声が聞こえる。 「ひぃいぃいいっ」 男は撃たれた腕を庇いながら必死に逃げようと体を捻らせた 男は自分のズボンに足を取られじたばたとするばかりだ。 狙いを定めたまま宗介はゆっくり男を追い詰めていく 「貴様は彼女に…」 「ソースケ!」 「かなめに何をしたああああ!!!!!」 パンパンパン!!! 発砲する直前クルツに腕を掴まれ狙いは全て外れてしまったが男は撃たれたと思い込み気絶して静かになった。 「離せ!!!」 「ソースケ!よせ!!」 「殺す!!あの男を殺してやる!!」 「ソースケ!!そんなクズより彼女を保護するのが先だ!!何か体に巻く物を持ってくる!彼女を頼んだぞ!」 「ッッッ!!」 とにかく先に彼女だと言われそんな当たり前のことも気が付かなかった自分に腹が立ちながら宗介は自分の上着を脱ぎかなめに慌てて駆け寄った。 「かなめ!かなめ!!」 「そ…すけ…?」 かなめは宗介の上着に包まれて抱きすくめられた。 来てくれた… 名前を呼ばれてる 抱き締められてる 必死な声… そーすけだ…良かった。 思い出してくれたのかな? 霞むせいでよく見えないけど もう大丈夫だ… 宗介の腕の中でかなめはそのまま意識を手放した。 続く |
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「お~これはこれは美しいお嬢さん。泣いているのかね。」
「ッ?!誰?!」 いきなり後ろから声をかけられかなめは警戒しながらその男から離れた。 「おや?もしやミズ・チドリかな?」男はゆっくりかなめに近く。 「あなた…誰?」 「私かね?私はただの政治家崩れだよ。貴女のお父さんとは少々馬が合わなくてね、色々と邪魔をされたものだ…」 男はにやついた顔でかなめの身体を舐めるように見た。 吐き気がする。…怖い! とっさにポケットの携帯を見ずに発信のリダイヤルを押した。 ここはミスリルだ。 こんなやつ一溜まりもない。 大丈夫。すぐ誰か来てくれる。 震える身体を無理やり押さえ込みじりじりと男から距離を取る。 「君は大きくなったね。よく顔を見せてごらん。」 「そこからでもよく見えるでしょ…こっちこないで。」 「強がりな所に生意気なところも父親譲りか?だが何時までそうしていられるかな?ここは屋上だ。私と君しかいないのだよ?」 男が手すりの角にかなめを追いつめる。 いやだ…怖い! 男の手がかなめを捕らえた。 「いや!触らないで!!」 「お前を汚してやったらあのくそ生意気なお前の父親はどんな顔をするのだろうな!!」 「いやあああ!そーすけ!そーすけえぇえ!!」 必死に逃げようと暴れるかなめを男は簡単に組み敷いて愉快そうに笑った。 ブーッブーッ 「カナメ?」 「さっきの子だよ…出てやれよ…」 「相良『そこからでもよく見えるでしょ…こっちこないで。』 「?」 「どうしたソースケ」 「シッ」 『強がりな所に生意気なところも父親譲りか?だが何時までそうしていられるかな?ここは屋上だ。私と君しかいないのだよ?』 どうやら誰かと話しているようだ。 なんだか嫌な予感がする。 『いや!触らないで!!』 『お前を汚してやったらあのくそ生意気なお前の父親はどんな顔をするのだろうな!!』 『いやあああ!そーすけ!そーすけえぇえ!!』 ブチッ 「!!」 ガチャッバタン!!! 「おいソースケ!」 携帯が切れた瞬間 宗介の中の何かが切れた。 傍にあった愛用銃を取るとクルツに何も言わずに部屋を取びだした。 頭の中は彼女の泣き顔で一杯だった。 続く |
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本当に…忘れちゃったんだ…
息がうまく出来ない… 泣いちゃだめだ! 泣いちゃ… かなめは震えていた。 彼が生きていれば大丈夫だと思っていたのに。 「そう…ごめんね…片付ける」 辛うじて出た言葉はそれだけだった。 カチャカチャと音を立てながらお弁当をしまう。 泣いちゃだめ…泣いちゃだめだ! 必死に涙を堪えながら震える手でしまう。 -ガチャ 「…なにしてんだかなめ。しまわなくていい。」 眉間にしわを寄せたクルツが不機嫌そうに言った。 「クルツ。」 「…」 チッ 舌打ちした音が聞こえた直後宗介は鈍い痛みにおそわれた 「そーすけ!やめてクルツくん!!」 「っざけんな!!何やってんだお前!あんだけやったのに一っつも覚えてねえのかよ!」 なおも殴りかかろうとするクルツを必死にかなめが引き止める。 「やめて!お願いクルツくん!!」 「かなめは黙ってろ!」 「お前の言っていることは意味が分からん」 ぱたぱたとほこりを払いゆっくりと宗介は立ち上がった。 頭が痛い。 殴られた場所よりも心臓が痛い。 泣いている。 彼女は… 「てめえ!」 「クルツ。彼女を部屋から出してくれ。」 「なんだと!」 「お前に聞きたいことがある。」 「わかった。出てくね」 「かなめ!」 「いいの。ありがとうクルツくん…」 お弁当をそのままにもう止まらなくなった涙を隠す余裕もなくかなめはフラフラと部屋を出ていく。 -ガチャ 宗介は彼女の後ろ姿を見ながら心臓の痛みに耐えた。 「クルツ。」 背を向けながら宗介がクルツを呼んだ。 「あんだよ」 クルツはことさら不機嫌そうに返事をする。 「彼女は誰だ」 感情の無い声が部屋に響いた。 「お前まだそんなこと言ってんのか!」 クルツは頭に血が上っていくのが解った。 宗介の胸ぐらを掴み無理やりこちらを向かせる。 「ッ!」 「…何故…俺はこんなに…苦しい?」 宗介は今にも泣きそうな顔をしていた。 「頭の中で彼女を行かせるなと…抱きしめなければと…何かが変なんだ…」 「ソースケ…」 「教えてくれクルツ…彼女は俺の何なのだ…」 苦しそうに呟いた宗介の瞳から涙が一筋流れた。 「お弁当忘れてきちゃったなぁ…」 屋上でポツリと呟いたかなめにひとりの男が声をかけた。 続く |
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「クルツくんおまたせ!とりあえずおにぎりね」 かなめの手には大きめサイズのおにぎりが握られていた。 車を走らせながら水筒の中身の味噌汁を貰う。 「なんかカナメ荷物多くないか?」 「そう?なんか作りすぎちゃったからそれ詰めてきたんだけど…後はそーすけの着替えとかかな?」 かなめの着替えもあるがそれは言わないで置いた。 「それで?そーすけなんかあったの?」 「あー…ちょっと仕事中にへましちまってさ。」 「怪我したの!?」 「怪我っつーかなんつーか…」歯切れの悪いクルツに嫌な予感がする。 「言い方を変える。そーすけ生きてるのよね。」 「あぁ。」 「骨とか折った?」 「いや。骨も折れてないし、怪我もしてないか…」 「じゃぁなんなのよ…」 わけわかんない。と助手席で眉を潜めるかなめにクルツは意を決して真実を伝えた。 「そーすけ!!」 部屋にはいるなりその女性は俺の名を呼んだ。 長い黒い髪、大きな目、白く細い手足、そして髪には赤いリボン。 頭が割れるように痛い。 何か…何か大事なことを忘れている気がする。 「そーすけ!頭いたいの?他に怪我は?大丈夫?」 「君は…?」 彼女の顔を見たら誰だと言えなかった。 心配そうな顔は真っ青になっていて、目からは今にも涙が零れそうだ。 「…問題ない」 辛うじて出た言葉は使い慣れた言葉だった。 「お腹空いてる?」 「あ…あぁ」 「そーすけの好きなもの沢山作りすぎちゃったのよね」 テキパキと机に弁当を広げていく彼女は少し震えているように見えた。 「はい。お味噌汁もあるわよ」 無理に作った笑顔 箸を持った手 彼女が動く度に揺れる黒い髪 俺は彼女を知っているはずだ。 誰だ 誰だ 誰だ 彼女は誰なんだ! 箸を受け取らず彼女を凝視していると 彼女が困ったように視線を泳がせた。 「食べ…ないの?」 「あぁ。俺は君が誰だか解らない。誰だか解らない人間が作った物は危険だ。食するわけにはいかん。」 「--ッ!!」 息を飲む気配がした。 彼女の手が、肩が、全身が…悲しみに染まっていくような感じがした。 とっさに下を向いた俺はもう顔が上げられなかった。 彼女の顔が見れない。 胸が苦しい。 これはなんだ… 重苦しい空気が部屋を支配した。 続く |
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