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何故この場にいない大佐殿の名が出てくるのだろう。
と、以前の宗介なら思っていただろう。 しかし今の彼は少しだけ理解していた。 千鳥はまだテッサに嫉妬しているのだと。 「面倒だなど君への気持ちを理解した後は思ったことはない」 はっきりと千鳥に向けて言葉を紡ぐ。 「…嘘だ」 「任務だと思っていた頃は無くも無いが」 「…」 「だが気持ちを理解した後は無い。一度もだ。」 真っ直ぐ千鳥を見ながら宗介は紡ぐ。 「…本当?」 伺うように顔を上げる千鳥に大きく頷いてやる。 「そっか」 少し安心したようで軽くはにかみながら宗介が差し出したコーヒーを受け取る。 「そーすけ」 「なんだ?」 --ぴとっ 「----っ!?」 「ちょっとだけ…こうしてて」 正面から千鳥が宗介の肩に顔を埋める。 そして 「ありがと」 ちゅっ 「!」 頬に柔らかい感触 甘い女性独特の吐息 柔らかい千鳥の声 目を合わせば照れてはにかむ その笑顔 全てが愛おしい。 「ー--んっ」 気が付けば宗介は千鳥の唇に自分の唇を重ねていた。 宗介が千鳥の正面に居たためちょうどみんなからは見えない。 見えてないしいいよね 宗介からなんて 珍しいなぁ なんて思いながら千鳥も その甘い口づけに酔いしれる。 長いようで短い口づけの後 二人は目を合わせ幸せすぎて笑う。 もちろん宗介の笑顔は千鳥にしかわからないくらいささやかだが それでも千鳥は充分だった。 「かなちゃん?いいことあったでしょ」 輪に戻った千鳥に響子がニヤニヤしながらつついていた。 さあ吐け!と小野Dと稲葉に詰め寄られ なんでもないわよっ! と言いながら逃げる要は幸せオーラ全開で クルツとマオは若いねぇと笑った。 夜も更け、遊び疲れて眠ってしまった友人達と 可愛い恋人と 気を許した仲間と-- 今までなら考えた事も無い幸せの形をかみしめ アルに警戒指示をした後宗介も目を閉じた。 続く PR |
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盛り上がる仲間を後目に
宗介は輪の中に帰ってこないかなめの方を見た。 なんだか弱々しくて すぐにでも側に寄りたい だがマテをされている状況でそれを無視していいのか 悩んでいると耳に聞き慣れた電子音が流れた。 少し電話してくると輪を離れ 入り口の方へと足を向けた。 『相良軍曹―本部より通信です。』 「繋いでくれ。」 耳に装着した小型通信機に触れると待機中の仮機体と接続しているアルの声が聞こえた。 この状況で通信が入るとは… 何かあったのだろうかと少し身構える。 『―サガラか。』 「は。どうしました大尉。」 通信してきたのはクルーゾーだった。 『ちょっと面倒なことになった』 「と、いいますと?」 『…マオはいるか』 「は?」 『マオとクルツだな。明日朝一で戻らせろ』 「撤収は明日の夕方のはずでは」 『サガラは予定通りそのままエンジェルと友人を送り届けろ。クルツとマオは朝一だ。わかったな』 「はぁ。」 『まったく…私では手に負えん』 深いため息をつくクルーゾーが容易に想像できる宗介はなんとなく頬を掻いた。 結局内容は教えてもらえず とりあえずマオとクルツに用件を伝えると二人は苦笑してわかったと頷いた。 かなめはまだ膝を抱えている。 どうしたもんかとオロオロしていると 見かねた稲葉がさっさと行けと背中を叩いた。 稲葉いわく 「あれは来てくれるの待ってるわよ。ぜぇーったいね!」 らしい。 女ってそんなもんなのよ!と稲葉は笑い常盤も早く早くと背中を押した。 温かいコーヒーを一杯もらいそっとかなめに近づいた。 「千鳥。コーヒーを飲むか?」 --ビクッ 肩が揺れる。 「どうした?」 かなめの正面に腰を下ろし伺うが顔をあげる気配がない。 どうしたものかと宗介は--ふぅ。と軽くため息をついた。 「…面倒だなって思ったでしょ」「なに?」 やっと聞けた千鳥の声は 小さくて掠れていた。 「ため息。」 「さっきのか」 「…面倒だなって思ったでしょ」 繰り返し紡がれる言葉 「わがままで偉そうであたしテッサみたいに素直じゃない」 顔を伏せたままかなめは小さな声で呟いた。 「いつも早とちりしてそーすけ困らせて」 だから あたしのこと 面倒だなって思ったでしょ 最後は聞き取れるかどうかというほどの小ささで。 千鳥は静かに泣いているようだった。 続く |
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「一応言っとくけどソースケの申請は正しいのよ」
マオは少し困ったような顔でかなめの頭を撫でた。 宗介は観念したのか仲間達と少し離れた場所でトランプを始めた。 クルツが大富豪のやり方を説明している。 「例え囁きが聞こえなくてもその刻まれた知識をねらう輩は多いわ」 「…ん」 「だからはじめ殆ど全員が反対した。勿論テッサもあたしもクルツもね。」 「…」 「だんだん会社が安定して技術も戻りつつあるけどまだ昔ほどミスリルは力はないわ」 「やっぱり…わがままだったんだ」 なんとなくマオが言いたい事を察したかなめは膝を抱えて頭を伏せた。 そんなかなめの頭を撫でながらマオは続けた。 「でもねソースケが」 「ソースケ?」 少し顔を上げて下からマオをみるかなめ ちくしょう上目遣いとかかわいすぎるじゃないのよ と内心撫でくり回したくなりつつ頭を撫でる事で我慢しつつ先を続けた。 「ソースケがね。たまにはカナメにも前のように過ごせる日をやりたいって」 「!」 「俺が守るから行かせてほしいって頭を下げたのよ」 「そーすけ…が」 吃驚したように目を大きく開きマオを見つめるかなめ 「だからテッサが折れたのよ。その代わりにこの警備つけるっていう条件付きで」 「…」 「さっきの副社長の話は半分は嘘よ。怒ってるのは警備過剰ではなくその警備と引き換えに本部が手薄になるからよ」 「そっか…」 「まぁなんだかんだであのジジイ。テッサが心配なのよ。テッサもねらわれない保証はないからね。だから機体は回収で明日撤収よ」 だいたいここはミスリルの土地なんだからソースケとソースケの仮機体だけで十分よ と笑うとマオはビールを一気に流し込んだ。 「そんな顔しないの。だからソースケは言わなかったのよ」 「ん…ごめん…ね」 また顔を伏せたかなめに肩をすくめ、頭を一撫でするとマオは皆の方へ戻ってしまった。 わがままだなぁあたし 伏せたままため息をつくかなめはテッサの事を思うと申し訳なくて胸が痛んだ。 テッサだって こうやって遊びたいのに 彼女は結局一番の責任者だから あたしみたいにわがまま言いたくても言えないのに なんだか恥ずかしくて 自分が情けなくて 涙が出そうだった。 続く |
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「まったくざーんねーんね~」
マオはビールを片手に大袈裟にため息をついた。 だが口元は笑っている。 「他の方は皆さん戻られたんですか?」 「なんかうちの副社長が遊んでないで戻って来いってお怒りみたいね」 ニヤニヤと言うのがぴったりな笑いを張り付けながらマオは空になったビールをくしゃっと潰し、新しいビールを開けた。 「マデューカスさん…大変そうだなぁ」 「ま、帰ったらソースケも大目玉覚悟だな」 笑うかなめにクルツがこれまたニヤニヤしながらかなめの隣で完全に固まっている宗介を見た。 「相良君も?」 「なんで相良まで?」 きょとんとしている元クラスメイトの視線を浴びつつ宗介は重い口を開いた。 「ちゅ…いや副社長は今回の警備は過剰だと仰っていて、実は許可が下りていない…」 「は?!」 「いやっ…たい…社長からは許可は出ているので大丈夫だと思ったのだが」 「テッサはソースケに甘いから副社長が断固反対ってね。」 「まぁ俺らはテッサ直属だからな~機体だけ回収されて俺らだけ残ったわけ」 だらだらと脂汗をかきつつ魚を手にかなめに言い訳をしている宗介を見つつニヤニヤ顔のマオとクルツ。 「ちょっとそーすけ!大丈夫だって言ったじゃないの!」 「いやっ…大佐殿から許可が得れれば構わないだったはずだ」 「でもマデューカスさん怒ってるんじゃない!」 「そ…それは…」 「カナメーその辺でストップ~」 じりじりと壁際に追い詰めつつ鬼のオーラを出し始めたかなめにマオが苦笑しながら止めにかかった。 「だって!」 マオに宥められながらいつの間にか手にしたふてくされながらハリセンを握り締めた。 相変わらずハリセン攻撃してるんだなと 友人が皆懐かしそうに二人を見ているのを クルツが見て喉で笑った。 「カナメ。だいたいソースケが大目玉食らうのはね」 「マオ!」 真相を話そうとするマオにすかさず止めに入る宗介。 だがこの程度で黙るマオでもなくクルツの方に向かって宗介を押しやる。 「はいはいクルツ黙らせてー」 「姉さん俺接近戦苦手何だけどw」 「あ?」 「ナンデモアリマセン」 仕方なく宗介を羽交い締めにして抑えるが長くは無理だなぁとため息をついた。 「マオ!」 「ソースケ五月蝿い!」 最終的には飼い主に一喝されしょんぼりと口を噤んだ。 続く |
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ちらりと横を見れば
千鳥が無心に魚を頬張っている。 腹が減っていたのだろうか… 俺も手にした魚を食べ始めた。 食べながら考えたい訳ではないが 何故か頭から離れない事を考える 本物は理由などわかっている。 それは千鳥の事だからだ。 ふれた瞬間の柔らかさ、暖かさ… そして甘い匂い… あの時感じた全てが 気を引き締めていないと蘇って 体が熱くなる。 さっきだってそうだ。 なぜ手を引いたのだろう。 これも本物はわかっている 理由は千鳥に触れたかったからだ。 触れたかったから触れるなど 今まで無かったというのに。 彼女の全てが麻薬のように俺を麻痺させる。 さっきも限界だった。 半分寝ている彼女に俺はなんて事を… 「そーすけ?なんか怖い顔してるけどどうしたの」 千鳥の声で我にかえる。 魚はとうに食べ終わっていた。 周りを見れば不安そうにみている友人達に千鳥。 「相良君大丈夫?なんかあったのかな?」 「いや、問題ない。少し考え事をしていただけだ。警備体制に問題はない。」 安心したのか皆持っていた魚をまた頬張りはじめた。 「なに考えてたのよ」 千鳥が新しい魚を寄越しながら聞いてきた。 「いや…それは…「Hei!!皆楽しくやってるか~?」 「クルツ!?」 いきなり響いた声に反射的に千鳥を背に隠し身構えてしまうが当の本人は気にせず魚を手に取り食べ始めた。 「クルツ!お前警備はどうした?!」 「あのなぁこんな平和な所であんな厳重な警備いらねえよ。うまいなこの鮎」 「おまえにやるためにつり上げたのではない!」 「お前そりゃひでーだろ。こちとら一日中狭い機体の中で待機だってぇのによ。あ、ありがと~味噌汁うめぇ」 「稲葉食い物を与えるな!いいから持ち場へ戻れクルツ!」 「やなこった!じきに他のメンツもくるからさ騒ぎまくろうぜ~!」 「クルツさんそれAS用のスーツですよね!見たこと無い形だ!」 「俺専用だからな!従来品より性能上がってるんだぜ!」 「はい。コーヒーをどうぞ」 「ありがとーヤマトナデシコここに現るって感じだな~」 クルツは皆と仲良く食事を始めた いかんマオが来る前になんとかしなければ!! 「はぁい~元気にしてた~?」 「マオさん!」 「お酒持ってきたわよ~」 「もう止められないわよ。諦めなさいそーすけ」 千鳥に笑いながら言われ 俺は頭を抱えため息を付いたのだった。 続く |
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