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「クルツくんおまたせ!とりあえずおにぎりね」 かなめの手には大きめサイズのおにぎりが握られていた。 車を走らせながら水筒の中身の味噌汁を貰う。 「なんかカナメ荷物多くないか?」 「そう?なんか作りすぎちゃったからそれ詰めてきたんだけど…後はそーすけの着替えとかかな?」 かなめの着替えもあるがそれは言わないで置いた。 「それで?そーすけなんかあったの?」 「あー…ちょっと仕事中にへましちまってさ。」 「怪我したの!?」 「怪我っつーかなんつーか…」歯切れの悪いクルツに嫌な予感がする。 「言い方を変える。そーすけ生きてるのよね。」 「あぁ。」 「骨とか折った?」 「いや。骨も折れてないし、怪我もしてないか…」 「じゃぁなんなのよ…」 わけわかんない。と助手席で眉を潜めるかなめにクルツは意を決して真実を伝えた。 「そーすけ!!」 部屋にはいるなりその女性は俺の名を呼んだ。 長い黒い髪、大きな目、白く細い手足、そして髪には赤いリボン。 頭が割れるように痛い。 何か…何か大事なことを忘れている気がする。 「そーすけ!頭いたいの?他に怪我は?大丈夫?」 「君は…?」 彼女の顔を見たら誰だと言えなかった。 心配そうな顔は真っ青になっていて、目からは今にも涙が零れそうだ。 「…問題ない」 辛うじて出た言葉は使い慣れた言葉だった。 「お腹空いてる?」 「あ…あぁ」 「そーすけの好きなもの沢山作りすぎちゃったのよね」 テキパキと机に弁当を広げていく彼女は少し震えているように見えた。 「はい。お味噌汁もあるわよ」 無理に作った笑顔 箸を持った手 彼女が動く度に揺れる黒い髪 俺は彼女を知っているはずだ。 誰だ 誰だ 誰だ 彼女は誰なんだ! 箸を受け取らず彼女を凝視していると 彼女が困ったように視線を泳がせた。 「食べ…ないの?」 「あぁ。俺は君が誰だか解らない。誰だか解らない人間が作った物は危険だ。食するわけにはいかん。」 「--ッ!!」 息を飲む気配がした。 彼女の手が、肩が、全身が…悲しみに染まっていくような感じがした。 とっさに下を向いた俺はもう顔が上げられなかった。 彼女の顔が見れない。 胸が苦しい。 これはなんだ… 重苦しい空気が部屋を支配した。 続く PR |
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