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『お前…ばかなの?』
はぁあぁああ… 無線から聞こえるクルツの呆れ声に無意識にため息が出た。 危うく彼女を傷つけてしまうところだった。 蓋をしてもなお溢れ出る欲望に身が引き裂かれるかと思った。 彼女の柔らかい肌が腕に触れ 膨らみが胸に当たり 甘い香りが鼻をくすぐった。 細い指でそっと傷口を撫でられ、ゾクゾクと背中を走る感覚にめまいを覚えながらなんとか声を絞り出すことに成功したものの、ちょっと惜しいと思ってしまう自分も居たりするのだった。 いかんいかん…と釣竿を握り直し、心を落ち着かせていく。 下では四人がまだ遊んでいるのが見える。 よし。大丈夫だ…落ちついてきた 『だいたいサガラはピュアすぎるんだよなぁ』 『そ~そ~。その歳では珍しいよなぁ~』 『いやいやピュアとは違うんじゃぁねぇの?なぁ姉さん』 『そ~ね~…言うならヘタレかしら?青いわよね~』 『違いねぇ!エンジェルも可哀想になぁ~』 『カナメの格好見てなんとも思わねぇの?』 『水着着て出てきたのに一言も無しだもんな』 『あり得ねー』 『俺なら即誉めるね』 『カナメ綺麗だよって~?そんなのソースケには無理よ無理』 『あんな乳見せられちゃ理性なんかすっ飛ぶと思うがね』 『あ~挟まれてぇ』 『柔らかそうな胸…尻…唇…』 『あ~サガラ死ね!』 『白い肌が淡いピンクになって…潤んだ瞳に濡れた唇…』 『ちょっと!カナメをおかずにしないでよね!』 『じゃ~マオが相手してくれよ』 『なっ!ダメに決まってんだろ!』 『クルツに聞いてねえよ』 『そうねぇ…考えとくわ』 『ちょ!メリッ』 「いい加減にしろ!ここは遊び場じゃないんだぞ!」 やっと落ち着いてきたと思ったら無線機から好き放題に言われ放題だ。 だから嫌だと言ったんだ 一段と眉を潜めながら宗介は思った。 だいたい彼女に似合わない服などあるものか。 ただやはりあまり肌が露出したものは控えてほしい。 彼女の身体で下品な妄想をする仲間に鉄拳制裁を加えてやりたいが護衛して貰っている以上そうもいかない。 いつどこから敵がくるか解らないのに弛みきった仲間にだんだんとイライラしてくる。 仲間達の下品な会話を右から左へ聞き流しながら落ち着け…落ち着けと宗介は深呼吸をした。 つづく PR |
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いつもそうだ。
宗介は限界にならないとあたしには教えてくれない。 傷だらけであたしを守っても、その傷を隠して隠して何にも無かった事にする。 あたしにはもう囁きは聞こえないけど、ソフィアとリンクしていた間に莫大な情報を脳に刻まれてしまった。 だからあたしは実はまだ狙われてる。 今日もキャンプがしたいと我が儘を言って来た。 宗介はずっと反対していて、だんだんあたしと口喧嘩になっちゃってたけど、恭子が 「相良君が居てくれれば何も怖いものなんか無いよ~それに相良君強いお友達沢山居るんでしょ!じゃぁ大丈夫じゃん!」 と言ったのを家の盗聴器で聞いていた第2ミスリルの皆が行かせてやれと説得してくれたかららしい。 女の子にあれだけ言わせてやらなきゃ男がすたるってもんだとクルツくんが笑っていて、宗介がため息をついたのを覚えている。 そういった経緯でこの辺り一帯にはM9やM6が配置され第2ミスリルの皆が守ってくれてる。 「そーすけのばか」 「千鳥…」 くるっと後ろを向いて彼の肩に身を預けた。 頬に当たる彼の首筋から 暖かい体温を感じる。 心配なら心配って言ってくれなきゃ解らない。 宗介はいつも欲しい言葉なんかくれなかった。 いつの間にか目には涙か溜まっていて、少しかすれた声が出た。 「なんでいつも…そうなのよ」 「…」 まだ生々しい傷口にそっと指で触れる。 「-ッ!」 ビクッと宗介の身体が跳ねた。 「痛いよね…ごめんね…いつも」 「…問題…ない…」 宗介の声が少し揺れてる。 あたしの為に 傷ついてしまう それがこんなに辛いなんて… 傷口を撫でながら 宗介の首筋に頬をすり寄せた。 「いつも…ありがとう。そーすけ」 「-ッ…ちど…り」 何かを耐えるような声色にハッとなったあたしは パッとそーすけから離れた。 「ご…ごめん!触ったら痛いって言ってたのに…」 「…」 離れてみた宗介は肩で息をしていた。 やだ…どうしよう… さっきより痛そう… 普段どれほど動き回っても息を切らさないのに… 「そーすけ…大丈夫?今飲み物取ってくるから待ってて!」 そんな彼を見ていられなくて 居ても経っても居られなくなったあたしは急いで荷物まで戻った。 宗介が何か言おうとしていたけど、それどころじゃなかった。 つづく |
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気がつけば釣り竿を没収され、上着を脱がされ横腹の傷口をまじまじと千鳥に見つめられるという意味の分からない状況に陥っていた。
おかしい。 何故こんな状況に? 今日のキャンプは俺のよく行う訓練キャンプと違い、千鳥いわく…親睦を深める為にアウトドアを楽しもうのキャンプだそうだ。 よって厳しい上官も訓練メニューも存在せず、調理道具や肉、野菜などは持ち寄りで、魚を現地調達する程度の特に先の負傷を報告せずに作業をしても問題ないと思われたのだが、どうやら千鳥はそれが面白くないらしい。 「ぅわぁ…痛そう…」 顔をしかめ身を屈めて傷口を見ている千鳥は、手を伸ばさずとも体を少し傾ければ触れられる位置にいた。 いつもは下ろしている長い黒髪を結い上げ、クチバシと呼ばれる金属のアクセサリーで留めてある。長く細い小指には細いピンクゴールドのピンキーリングと呼ばれる指輪をしている。 今日の水着の色はサファイアブルーのグラデーションだ。 自分にそういったセンスは無いが、千鳥にとても似合っていると思った。 水着を着る際は場所を選んで欲しい。 そう思うようになったのはいつからだったか… 彼女の綺麗な肌を、他の大多数の男に見られるのを不快に思ってしまう。 ばかな事をと昔は思っていた…彼女は重要な護衛対象だ。だいたい自分は、彼女のそばで護衛出来るだけでも幸運なのだからと。 実際ダナンの中の奴らはいつでも変わると帰る度に言いに来ていたる。 それだけは絶対にあってはならないと この気持ちを理解せず思っていた。 今は尚更だ。 なんせ彼女は自分が全てをかけて手に入れたいと初めて願う唯一無二の存在なのだから。 こんな自分にも優しく世話を焼いてくれる彼女を渡すわけに行かなかった。 「もー…怪我してるなら怪我してるっていってよね」 「すまない。」 「まだいたい?」 「問題ない。」 「…つつくわよ」 「ぅ…触らなければ問題ない」 やっぱり痛いんじゃないの~と膨れながらも心配そうに見てくる彼女が愛しい。 出来ることなら今すぐにでも抱きしめたいと願ってしまう自分の浅ましさに顔には出さず、しかしかなりの忍耐と努力で心のそこで蓋をした。 続く |
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そういえば遊び疲れた恭子が
「休憩~」 と言いながら川からあがって結構時間が経った気がする。 あたしも疲れてきたかな~と釣りに飽きた小野Dと風間君に 瑞希とお蓮さんの相手を変わって貰って休憩しようと辺りを見回したら ちょっと離れた所に並んで座るソースケと恭子を見つけた。 何だか楽しそうで…ちょっと胸がざわっとする。 別に恭子は親友だし、あたしはソースケとは何でもないし、二人が一緒に楽しそうにしてても関係ないけどさ。 でもなんか…あそこはあたしの席なのになんて柄にもなく思う。 隣にいるのは恭子なのにそんなことを考えるなんて… 「暑っ…」 張り付く前髪を指で横に撫でつけながら 視界に二人が入るように少し大きめな岩に座った。 不意にさっきのソースケの言葉が頭の中に浮かび上がる。 あいつの大切って何だろう。 「なに考えてんだか~あたしは」 苦笑いを浮かべゴロンと横になった。 「あ~かなちゃん!日焼けしちゃうよ~」 いつの間にか恭子が隣に立っていた。 宗介はまだ釣りをしている。 「かなちゃん!横になるなら相良くんの隣が良いよ~日陰だし、風も気持ちいいよ!」 無邪気に笑う恭子に 少し罪悪感を感じながら 「そうなんだ。じゃ行ってみようかな~?」 なんだか眠くってさ~と笑いながらあたしは恭子に手を振りながら宗介のいる岩場に向かった。 「わぁ~本当!涼しい~!」 「どうした千鳥。疲れたのか」 「うん。昨日夜あんまり寝てないから、ちょっとね」 宗介の隣に行こうか悩みながらちょっと後ろから話をする。 「そうだな。何やら調理していたようだが?」 「まあ…今日のお弁当の仕込みを…ってあんた、また見てたの?」 「む…」 しまった!とみるみるうちに汗をだらだらとかいていく宗介にはぁ…とため息をついてつついてやった。 「あんたね…いつもいつも人のこと見てんじゃねーわよ。」 つんつん 実は最近はそれもちょっと嬉しかったりするのだが、照れ隠しに横っ腹をつついた。 「?」 いつもならすぐに 「俺は君の護衛だ。常に行動を把握してなくてどうする。」 とかなんとか言うはずが つついた所を軽く指で押さえて一層汗を流している。 「…千鳥…」 「ん?なぁに?」 覗きこむと顔が軽く青ざめているような? 「そこは先の任務で負傷し、治療した場所なので…以後別の場所を刺すようにしてくれ」 「もっと早く言え!このばかー!!」 続く |
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「「と…常盤?!」」
「常盤さんいつから起きてたの?!」 んーっと伸びをして体を解す恭子は特に何ともなげに 「はじめから☆面白そうだから皆で寝たふりしちゃった☆」 「「「皆?」」」 固まってしまった男三人を尻目に起きて伸びをして体を解す残りの女子。 「ばかな…さっき確認した時はは寝ていたはずだ」 まさか自分の判断が間違えていたとは…と宗介だけは違う理由で固まっていたが 一向に起きない女子を見て首を傾げる。 「千鳥?やはり寝ているのか?」確認しようと近く宗介 「うるさい!」 起きあがらずに丸まったまま返事をするかなめ。 「かなちゃん照れてる~」 にやにやと恭子が笑った。 「恭子!!」 「はいはい。ご飯食べよう~」 思わず起き上がってしまったかなめは うーとかあーとか言いながら 恥ずかしそうに宗介から顔を背けた。 「千鳥?」 「うー…そーすけのばか」 いつもと変わらない雰囲気の宗介に 少し膨れながらかなめは立ち上がって皆の元へ歩いていった。 「???」 宗介はよくわからなかったが飼い主の後ろをついて行った。 「相良くん、ちょっといい?」 「常盤か…どうした?」 食事の後雨も上がり、男子は釣り竿を持ち、女子は水着に着替えて洞窟の近くの川に来ていた。 天気は回復に向かい、釣りをしてるちょっと下流では女子が水遊びをしている。 釣れ具合も上々で今から夜の食事が楽しみだ。 少し離れたところで全体を見渡せる場所に陣取った宗介は周りを警戒しながらそれなりに釣りを楽しんでいた。 「わぁ~いっぱい釣れてるね☆相良くん釣りが趣味って本当だったんだ」 「肯定だ。特に今日は調子が良いようだ。」 しかけから目を離さずに会話する宗介のとなりに座り、恭子は言葉を続けた。 「あのねかなちゃんは可愛くて、スタイルよくて、モテモテさんなのに、凄い恥ずかしがり屋で、素直じゃないけど、凄い頑張りやさんなんだ」 「そうだな」 「相良くんが来てからかなちゃん毎日楽しそうであたし嬉しくって」 えへへ…と本当に嬉しそうに恭子は笑った。 「そうか」 「うん!だからね…ずっと…かなちゃんのそばにいてあげてね」 恭子は楽しそうにはしゃぐかなめを見ながら言った。 「相良くん…かなちゃんのそばにいて…変わったから。」 「……」 「かなちゃん…守ってね」 ぽつりと呟いた恭子の横顔は いつもの無邪気な彼女からとは別人の様に大人びていた。 つづく |
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