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【2025/07/21 18:53 】 |
すれ違い7
クルツがかなめに電話をかける1時間前

-第二ミスリル-

「あたしが迎えに行くわ。」
いつの間にか任務から戻ったマオが二人に声をかけた。
「メリッサ!」
「ねぇさん。かなめは俺が迎えにいく。」
「あんたはだめよ、シャワー浴びてご飯食べて仮眠をとりなさい。テッサもよ」
たばこを吸いながらテキパキと指示を出す。
「メリッサ!私はまだ大丈夫です!」
「俺もだ!」
「あんたらね…鏡見なさい。ゾンビみたいな顔してるわよ。そんな顔でかなめを迎えに行くなんて絶対許さないわ」
あの子鋭いのよ。と煙草の火を消した。

「わかった。シャワー浴びてコーヒー飲んで迎えにいく。」
「わかってないじゃないの」
「俺のせいなんだよ!あいつが変なの解ってて先行させたのも、それを気にしないフリをしてあいつを車に戻さなかったのも俺なんだよ!」
わかっていた。クルツには宗介の異変が。
だいたいそんなときは兄貴分である俺が見ててやらなきゃならなかったのに、と今にも自らを殴りそうな顔で叫んだ。
「ウェーバーさん…」
「クルツ…」
マオは仕方ない奴ね…と苦笑して背中をポンポンと叩いた。
「あんたのせいじゃないわよ。報告書読んだけど、ソースケが油断しすぎなのよ。平和ボケなんて戦争バカだったあの子にはあっちゃならないことだわね」
「ねぇさん」
「ほら!シャキっとしなさい!行くならとっととシャワー浴びてかなめを迎えに行く!早くしないとあたしが行くわよ!!」
慌てて出て行ったクルツを見ながらテッサも席を立った。
「メリッサ私も少し仮眠を取ります。かなめさんがきたらちゃんとします」
「ええ。少し休みなさい、あんたもずっと寝てないんでしょ?」
心配そうにテッサを抱きしめると頭を撫でた。
ダナンに乗っていた時とは比べ物にならないが、実際テッサは忙しかった。
会社として色々とカモフラージュしているが研究や事務処理や出張などテッサは殆ど休んでいない。
マデューカスがサポートしているがテッサも色々大変なのだ。

「大丈夫よ。あの子達はそんなヤワな関係じゃないわ。」
「そうですよね…ありがとう。メリッサ…」
豊かなマオの胸に頬を寄せ、暖かい彼女の体温を感じるとテッサの心は癒されていった。



続く
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【2011/05/17 12:39 】 | フルメタ宗かな | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
すれ違い6
朝になっても宗介は帰ってこなかった。

携帯の充電をしながらとりあえず朝食を作った。
彼が帰ってきたらきっとお腹空いてるはずだから。

今日は体調が悪いとお店に連絡してお休みをもらった。
明日は昨日出た代わりにお休みになっているから二日間は大丈夫。

気を抜くと恐怖に支配されそうになる。


~♪~♪

携帯が鳴った。
「そーすけ!?」
『おはよう~愛しのかなめちゃぁん!』
耳に入ったのはぶっきらぼうな彼の声ではなく、その同僚のクルツだった。
「クルツくん…おはよ」
自然と声に力がなくなる。
『おいおい…かなめちゃん大丈夫か?』
心配そうなクルツの声。だがかなめは自分の事などどうでも良かった。
「クルツくん…今どこ?一緒にそーすけいる?」
『あ~その事なんだけどさ…ちょっとつきあってくんない?』
「は?」
『ちょっとソースケ今会社から出れなくてさ。かなめちゃんに来て欲しいんだよね』
「出れない?」
『俺もう下に実はいるんだけど、どれぐらいで支度できそう?その間飯でも買ってくるからさ~』
どうやらかなめの意思など始めからきいてないようだ。
もちろんかなめは行くつもりだから構わないのだが。
「クルツくん。20分で支度する。朝ご飯ならあるから大人しく待ってて。」
『まじ?やった!了解お姫様!』
生きてる。
クルツの声は色々隠しているがだが宗介は生きてる。
今はそれだけでよかった。





「相変わらずお前の嫁さんは出来る嫁だな…ソースケ」
携帯をしまいながらため息を付く。
あの疲れ切った声はきっと寝ていない。
電話に出るのも早かった。
一晩中携帯を握りしめ一人彼の帰りを待っていたのだろう。

それなのにアイツは忘れてしまった。
一番大事な事を…
テッサが居なければ殴ってやりたかった。
宗介の様子を見に行った同僚は信じられないと呟いていた。

また戻ってしまった。
やっと彼は暖かい物を手に入れたのに。
目には暗い色しかたたえず、ただひたすらに任務を遂行するだけの彼に。

つい一週間前の彼は仲間に自ら相談に回り、彼女を娶るにはどうしたらと頭を悩ませ、周りに冷やかされつつ指輪の用意やムードがどうとか、服装や時間にも気を配れだのいっぺんに言われながら必死にメモなんか取っていて…
「やっとあいつが感情を見せ始めたってのによ…」
やるせない気持ちでクルツはため息を付いた。



続く
【2011/05/17 11:52 】 | フルメタ宗かな | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
すれ違い5
気が付けば体はふわふわと白い空間に浮いていた。

これは夢だ。
宗介はすぐに理解した。

なんだかずっと聞きたいと願っていた声が聞こえた気がしてそっちの方を向いた。

するといつの間にか手には銃を持ち背後にはクルツがいてどこかの廃ビルに宗介はいた。

目の前の部屋に入ると床には美しい女性が倒れていた。

俺はこの女性を知っている…
だが
思い出せない。

体は言うことを聞かずその女性に勝手に触れる。

だめだ。
触れてはいけない!
汚れてしまう。
あの無垢な笑顔が消えてしまう!!
体は勝手に動きその女性を腕に抱いた。

その瞬間
その美しい四肢がすさまじい爆発音と共にちぎれ飛び
宗介はそこで目が覚めた。

肩が上下に激しく揺れる
のどが痛い。
息が切れて苦しい。
どうやら叫んだようだ。
顔になんだか違和感を感じる。
手で顔を覆えば濡れていたのが解った。

涙…だと?
そんなもの久しく感じなかったものなのに。

夢のあの女性は誰なのだろう。
とても大事で愛しくてずっとずっと望んでいたような気がする。

でも思い出せない。
前に会った事があっただろうか?

いつまでも寝てるわけにはいかないと思い宗介は横に置いてあった上着を羽織る。
ポケットに何かはいっている。

出してみれば小さな箱だった。
中には青い宝石の付いた小さな指輪。

それをみたとたん宗介は落ち着かなくなった。
帰らなければ。
彼女の元へ
彼女とは誰だ
俺はどこに帰るのだ

頭が割れるように痛い

もう何がなんだか解らなくなっていた。







「あぁあああぁあああ!!!!!」
医務室から悲鳴が聞こえた。
宗介だ。
さっき部屋にいったら気持ちよさそうに寝ていた。

テッサはかなめに連絡するかを迷っていた
強がりで意地っ張りな彼女は本当は怖がりで不安定な女性だと解っている。
だからよけいに連絡するかを迷う。

今の宗介を見て彼女がショックを受けるかもしれない。
悲しみに心を壊されてしまうかもしれない。

一時は恋のライバルだったがテッサにとって宗介もかなめも愛すべき友人だった。

悩むテッサに追い討ちをかけるような宗介の悲鳴。

テッサにはこれ以上は耐えられなかった。


続く
【2011/05/17 01:36 】 | フルメタ宗かな | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
すれ違い4
ザザー

テレビがいつの間にか砂嵐になっている。
ぼんやりと電気もつけずにかなめは眺めていた。

時間は深夜2時

いつもなら寝ている時間だ。
明日も仕事だ寝なきゃ。
頭の中で文字だけが回る。

宗介からはまだ連絡がない。

あれから何度も宗介の携帯にコールしたのに通じない。
折り返しも来ない。

鳴らない携帯を震える手で必死に抱きながらかなめは待った。





第二ミスリルの中は慌ただしかった。
医務室で寝ている宗介は起きあがる気配がなかった。

目はあいているがどこか遠くを見ている。
彼は目を覚ました時近付いた人にこう言った。

「カリーニン少佐はどこだ」


「記憶障害?」
部下の素っ頓狂な声を聞いて、目の前の可愛らしいアッシュブロンドの少女テッサはかなり困ったように頷いた。
「ええ。多分爆発を間近に受け脳に何らかの障害が出ているようです。」
「つっても少佐の事やミスリルの事は解るんだろ?」
なら問題ないじゃねぇかとクルツがコーヒーを啜った。
「問題はそこなんです。」
眉を潜め瞳を曇らせるテッサ。
「そこ?」
「相良さんは大事な時間だけ忘れています」
「大事な時間だけ?」
「そうです。一番愛してるあの人との日々を」
「そりゃ…まさか!?」
クルツも流石に顔色を変えた。
テッサは悲しみと切なさで瞳を染めただ一言を呟くように吐き出した。
「相良さんは…かなめさんを覚えていません…」










白い天井を見上げながら宗介は先ほどの兵の言葉を思い出していた。

「よう相良!危なかったんだってな?あんま無茶するなよ~カナメが悲しむぜ」

カナメとは誰のことだ

そう言ったら大層驚かれ何度も確認された。

「チドリ・カナメだよ!コードネーム・エンジェルだ!お前の未来の妻だろうが!頭オカシくなったのか?」

チドリ?カナメ?
誰だ?俺には妻などいない。作る気もない。
だいたい俺たちはミスリルに雇われた傭兵だ。
危険な任務ばかりだというのにそんなものに現を抜かす暇などない。

いつものように答えたはずだ。
俺は間違っていない。
なのに何故か胸が苦しくなった。
頭がズキズキするこれは何だろう…

「お前…まさか記憶が…」

そいつは顔色を変えて飛び出していった。
なんだか無償に体がだるかった。

本部にいるのだ少し寝ようと宗介は眠りに落ちた。


続く
【2011/05/17 01:05 】 | フルメタ宗かな | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
すれ違い3
「どうも廃ビルみたいだな。こりゃ…」
各部屋を周りながらクルツがボヤいた。
「そうだな。」
お互い背を向けながら前に銃を構えて通路を進む。
「この部屋で最後だ」

キィッ-

嫌な音を立てて扉が開く
中には人の気配はなかった。
殺風景な部屋の中には小さな人形が置いてある。

誰も居ないことを確認後宗介は何となく気になってその人形に近付いた。

長い黒い髪に大きな偽物の目。
白い肌に青いワンピースを着たその人形は赤いリボンを頭に着けている。

まるで彼女のようだ。

「おいソースケ。気を付けろよ」

宗介はクルツの声など聞こえていないようで
何も疑わず何も考えずその人形を手に取った。

カチッ
「ソースケ!伏せろ!!」
-ドォン-
人形が宗介の手の中で爆発したのが先か
クルツが持っていた銃で叩き上げたのが先か
部屋に響きわたる爆発音と鈍い痛みで宗介の意識は途絶えた。








帰ってきたら家には宗介の姿はなかった。
食卓の上に置かれた手紙には
いつものように一言だけ「仕事が入ったので行ってくる。」と書いてあった。

今日は休暇願いを出して休みにしたはずだ。
それで呼び出されたのだから事務作業ではない。

そーすけが…呼び出されるような事が今になってあるなんて…

足元が穴が開いたような感覚になった。
そうだ。彼はまだ傭兵なのだ。
あの頃のように危険ではない仕事ばかりだったからどこかで安心していた。

もう彼が傷つかない仕事なのだと…。

そんなはず無かった。
そういえばたまに仕事から帰ってすぐ触れようとせず風呂場に直行する事がある。

「少々疲れているだけだ。問題ない。」

彼はそう言っていた。
あれはあたしを不安にさせないために取り繕ったのではないか?
だんだん大人になってきた彼は昔ほど表情に焦りが出なくなった。
クールというかなんというか。
少し微笑む事も覚えてきた。
そんな平和な日々が嬉しくて幸せであたしは忘れていた…

「そーすけ…」
返事などあるはずもなく
心には不安と恐怖。

かなめは無意識に携帯を握りしめた。


続く
【2011/05/12 01:39 】 | フルメタ宗かな | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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