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「おいソースケ!」
クルツは訳も分からず宗介の後を追った。 かなめからの電話に出てからおかしい。 急に銃など持ち出して走り出した。 「クソッ!!」 エレベーターがなかなか来ず宗介は横の非常階段を上り始めた。 屋上へは4階上がればいいはずだ! 頭の中で彼女の悲鳴だけがこだまする。 彼女は俺の名を呼んだ!行かなければ! -バアアアン! 「なんだ!?」 屋上の扉を勢いで蹴破り飛び出した宗介は銃を構えた。 「ッ!!!」 そこで見たのは最悪の景色だった。 見たことがない男が上半身裸で、下はベルトが外されチャックは降りている。 そしてその下には冷たい床に組み敷かれた彼女。 服は無惨に引き裂かれ美しい四肢を晒していた。 力ない瞳。 殴られた頬。 唇の箸から流れる一筋の赤い線 一気に宗介の脳に色々な風景、音、記憶が流れ込む。 そして 何かが切れた。 パァンッ 「ぎゃあぁああ!!」 かなめを組み敷いていた男が叫び声をあげ地面に転がった。 パァンッ 「うぎぃいぁあぁあああ!」 乾いた音が響き男が叫び声をあげる 「なにをした…」 ゆっくりと近づきながら感情の押し殺した声が聞こえる。 「ひぃいぃいいっ」 男は撃たれた腕を庇いながら必死に逃げようと体を捻らせた 男は自分のズボンに足を取られじたばたとするばかりだ。 狙いを定めたまま宗介はゆっくり男を追い詰めていく 「貴様は彼女に…」 「ソースケ!」 「かなめに何をしたああああ!!!!!」 パンパンパン!!! 発砲する直前クルツに腕を掴まれ狙いは全て外れてしまったが男は撃たれたと思い込み気絶して静かになった。 「離せ!!!」 「ソースケ!よせ!!」 「殺す!!あの男を殺してやる!!」 「ソースケ!!そんなクズより彼女を保護するのが先だ!!何か体に巻く物を持ってくる!彼女を頼んだぞ!」 「ッッッ!!」 とにかく先に彼女だと言われそんな当たり前のことも気が付かなかった自分に腹が立ちながら宗介は自分の上着を脱ぎかなめに慌てて駆け寄った。 「かなめ!かなめ!!」 「そ…すけ…?」 かなめは宗介の上着に包まれて抱きすくめられた。 来てくれた… 名前を呼ばれてる 抱き締められてる 必死な声… そーすけだ…良かった。 思い出してくれたのかな? 霞むせいでよく見えないけど もう大丈夫だ… 宗介の腕の中でかなめはそのまま意識を手放した。 続く PR |
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「お~これはこれは美しいお嬢さん。泣いているのかね。」
「ッ?!誰?!」 いきなり後ろから声をかけられかなめは警戒しながらその男から離れた。 「おや?もしやミズ・チドリかな?」男はゆっくりかなめに近く。 「あなた…誰?」 「私かね?私はただの政治家崩れだよ。貴女のお父さんとは少々馬が合わなくてね、色々と邪魔をされたものだ…」 男はにやついた顔でかなめの身体を舐めるように見た。 吐き気がする。…怖い! とっさにポケットの携帯を見ずに発信のリダイヤルを押した。 ここはミスリルだ。 こんなやつ一溜まりもない。 大丈夫。すぐ誰か来てくれる。 震える身体を無理やり押さえ込みじりじりと男から距離を取る。 「君は大きくなったね。よく顔を見せてごらん。」 「そこからでもよく見えるでしょ…こっちこないで。」 「強がりな所に生意気なところも父親譲りか?だが何時までそうしていられるかな?ここは屋上だ。私と君しかいないのだよ?」 男が手すりの角にかなめを追いつめる。 いやだ…怖い! 男の手がかなめを捕らえた。 「いや!触らないで!!」 「お前を汚してやったらあのくそ生意気なお前の父親はどんな顔をするのだろうな!!」 「いやあああ!そーすけ!そーすけえぇえ!!」 必死に逃げようと暴れるかなめを男は簡単に組み敷いて愉快そうに笑った。 ブーッブーッ 「カナメ?」 「さっきの子だよ…出てやれよ…」 「相良『そこからでもよく見えるでしょ…こっちこないで。』 「?」 「どうしたソースケ」 「シッ」 『強がりな所に生意気なところも父親譲りか?だが何時までそうしていられるかな?ここは屋上だ。私と君しかいないのだよ?』 どうやら誰かと話しているようだ。 なんだか嫌な予感がする。 『いや!触らないで!!』 『お前を汚してやったらあのくそ生意気なお前の父親はどんな顔をするのだろうな!!』 『いやあああ!そーすけ!そーすけえぇえ!!』 ブチッ 「!!」 ガチャッバタン!!! 「おいソースケ!」 携帯が切れた瞬間 宗介の中の何かが切れた。 傍にあった愛用銃を取るとクルツに何も言わずに部屋を取びだした。 頭の中は彼女の泣き顔で一杯だった。 続く |
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本当に…忘れちゃったんだ…
息がうまく出来ない… 泣いちゃだめだ! 泣いちゃ… かなめは震えていた。 彼が生きていれば大丈夫だと思っていたのに。 「そう…ごめんね…片付ける」 辛うじて出た言葉はそれだけだった。 カチャカチャと音を立てながらお弁当をしまう。 泣いちゃだめ…泣いちゃだめだ! 必死に涙を堪えながら震える手でしまう。 -ガチャ 「…なにしてんだかなめ。しまわなくていい。」 眉間にしわを寄せたクルツが不機嫌そうに言った。 「クルツ。」 「…」 チッ 舌打ちした音が聞こえた直後宗介は鈍い痛みにおそわれた 「そーすけ!やめてクルツくん!!」 「っざけんな!!何やってんだお前!あんだけやったのに一っつも覚えてねえのかよ!」 なおも殴りかかろうとするクルツを必死にかなめが引き止める。 「やめて!お願いクルツくん!!」 「かなめは黙ってろ!」 「お前の言っていることは意味が分からん」 ぱたぱたとほこりを払いゆっくりと宗介は立ち上がった。 頭が痛い。 殴られた場所よりも心臓が痛い。 泣いている。 彼女は… 「てめえ!」 「クルツ。彼女を部屋から出してくれ。」 「なんだと!」 「お前に聞きたいことがある。」 「わかった。出てくね」 「かなめ!」 「いいの。ありがとうクルツくん…」 お弁当をそのままにもう止まらなくなった涙を隠す余裕もなくかなめはフラフラと部屋を出ていく。 -ガチャ 宗介は彼女の後ろ姿を見ながら心臓の痛みに耐えた。 「クルツ。」 背を向けながら宗介がクルツを呼んだ。 「あんだよ」 クルツはことさら不機嫌そうに返事をする。 「彼女は誰だ」 感情の無い声が部屋に響いた。 「お前まだそんなこと言ってんのか!」 クルツは頭に血が上っていくのが解った。 宗介の胸ぐらを掴み無理やりこちらを向かせる。 「ッ!」 「…何故…俺はこんなに…苦しい?」 宗介は今にも泣きそうな顔をしていた。 「頭の中で彼女を行かせるなと…抱きしめなければと…何かが変なんだ…」 「ソースケ…」 「教えてくれクルツ…彼女は俺の何なのだ…」 苦しそうに呟いた宗介の瞳から涙が一筋流れた。 「お弁当忘れてきちゃったなぁ…」 屋上でポツリと呟いたかなめにひとりの男が声をかけた。 続く |
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「クルツくんおまたせ!とりあえずおにぎりね」 かなめの手には大きめサイズのおにぎりが握られていた。 車を走らせながら水筒の中身の味噌汁を貰う。 「なんかカナメ荷物多くないか?」 「そう?なんか作りすぎちゃったからそれ詰めてきたんだけど…後はそーすけの着替えとかかな?」 かなめの着替えもあるがそれは言わないで置いた。 「それで?そーすけなんかあったの?」 「あー…ちょっと仕事中にへましちまってさ。」 「怪我したの!?」 「怪我っつーかなんつーか…」歯切れの悪いクルツに嫌な予感がする。 「言い方を変える。そーすけ生きてるのよね。」 「あぁ。」 「骨とか折った?」 「いや。骨も折れてないし、怪我もしてないか…」 「じゃぁなんなのよ…」 わけわかんない。と助手席で眉を潜めるかなめにクルツは意を決して真実を伝えた。 「そーすけ!!」 部屋にはいるなりその女性は俺の名を呼んだ。 長い黒い髪、大きな目、白く細い手足、そして髪には赤いリボン。 頭が割れるように痛い。 何か…何か大事なことを忘れている気がする。 「そーすけ!頭いたいの?他に怪我は?大丈夫?」 「君は…?」 彼女の顔を見たら誰だと言えなかった。 心配そうな顔は真っ青になっていて、目からは今にも涙が零れそうだ。 「…問題ない」 辛うじて出た言葉は使い慣れた言葉だった。 「お腹空いてる?」 「あ…あぁ」 「そーすけの好きなもの沢山作りすぎちゃったのよね」 テキパキと机に弁当を広げていく彼女は少し震えているように見えた。 「はい。お味噌汁もあるわよ」 無理に作った笑顔 箸を持った手 彼女が動く度に揺れる黒い髪 俺は彼女を知っているはずだ。 誰だ 誰だ 誰だ 彼女は誰なんだ! 箸を受け取らず彼女を凝視していると 彼女が困ったように視線を泳がせた。 「食べ…ないの?」 「あぁ。俺は君が誰だか解らない。誰だか解らない人間が作った物は危険だ。食するわけにはいかん。」 「--ッ!!」 息を飲む気配がした。 彼女の手が、肩が、全身が…悲しみに染まっていくような感じがした。 とっさに下を向いた俺はもう顔が上げられなかった。 彼女の顔が見れない。 胸が苦しい。 これはなんだ… 重苦しい空気が部屋を支配した。 続く |
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クルツがかなめに電話をかける1時間前
-第二ミスリル- 「あたしが迎えに行くわ。」 いつの間にか任務から戻ったマオが二人に声をかけた。 「メリッサ!」 「ねぇさん。かなめは俺が迎えにいく。」 「あんたはだめよ、シャワー浴びてご飯食べて仮眠をとりなさい。テッサもよ」 たばこを吸いながらテキパキと指示を出す。 「メリッサ!私はまだ大丈夫です!」 「俺もだ!」 「あんたらね…鏡見なさい。ゾンビみたいな顔してるわよ。そんな顔でかなめを迎えに行くなんて絶対許さないわ」 あの子鋭いのよ。と煙草の火を消した。 「わかった。シャワー浴びてコーヒー飲んで迎えにいく。」 「わかってないじゃないの」 「俺のせいなんだよ!あいつが変なの解ってて先行させたのも、それを気にしないフリをしてあいつを車に戻さなかったのも俺なんだよ!」 わかっていた。クルツには宗介の異変が。 だいたいそんなときは兄貴分である俺が見ててやらなきゃならなかったのに、と今にも自らを殴りそうな顔で叫んだ。 「ウェーバーさん…」 「クルツ…」 マオは仕方ない奴ね…と苦笑して背中をポンポンと叩いた。 「あんたのせいじゃないわよ。報告書読んだけど、ソースケが油断しすぎなのよ。平和ボケなんて戦争バカだったあの子にはあっちゃならないことだわね」 「ねぇさん」 「ほら!シャキっとしなさい!行くならとっととシャワー浴びてかなめを迎えに行く!早くしないとあたしが行くわよ!!」 慌てて出て行ったクルツを見ながらテッサも席を立った。 「メリッサ私も少し仮眠を取ります。かなめさんがきたらちゃんとします」 「ええ。少し休みなさい、あんたもずっと寝てないんでしょ?」 心配そうにテッサを抱きしめると頭を撫でた。 ダナンに乗っていた時とは比べ物にならないが、実際テッサは忙しかった。 会社として色々とカモフラージュしているが研究や事務処理や出張などテッサは殆ど休んでいない。 マデューカスがサポートしているがテッサも色々大変なのだ。 「大丈夫よ。あの子達はそんなヤワな関係じゃないわ。」 「そうですよね…ありがとう。メリッサ…」 豊かなマオの胸に頬を寄せ、暖かい彼女の体温を感じるとテッサの心は癒されていった。 続く |
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